私たちの考えること
S3 Associates(エス・キューブ・アソシエイツ、以下S3A)は、建築及び構造物の構造設計監理・技術開発を専門とする技術者の集合体です。
◆構造設計の役割
構造設計の社会的役割には、「盾(守り)」と「剣(攻め)」、大きく分けて二つの側面があります。
「盾」としての役割は、もちろん安全・安心な建築物を作り、それを利用する人々や財産を災害から守ることです。地震・台風・積雪…、日本は世界的に見ても稀な災害大国です。これら災害と向き合い、人々の生活基盤として安らぎを与える建築を実現していくことは、構造設計のもっとも主要で根底をなす社会的役割であると言えます。
では、「剣」としての役割とは何か。それは建築の可能性を拡げるための武器となることです。一つとして同一の建築物が存在しないことは当然として、建築が創造的行為である限り、より積極的に過去にない新しい空間を獲得したいと言う要求は必ず生じます。設計者の持つ技術・知識・経験あらゆる能力を駆使して障害を切り拓き、これらの要求に応えて行くための技術的土台となる、そのことも構造設計者に求められる重要な使命であると考えています。
もちろん、これらの武器や防具を使いこなすためには、我々建築構造に携わるもの自身が強靭な肉体(技術・能力・忍耐)を備え、それをより高める努力を怠ってはならないことは言うまでもありません。
◆名称に込めた思い
設計組織の名称「S3 Associates(エス・キューブ・アソシエイツ)」には、このような我々の構造設計・構造デザインに対する思いが込められています。すなわち「健全(Sound)で持続可能(Sustainable)な建築・構造物を実現することは当然として、そのプロジェクトに応じて挑戦した+αの要素(Something else)を通して、建築・空間の可能性を拡げることに少しでも貢献していきたい」と言う思いです。
◆それを実現するための体制
そういった理念を実現していくための体制として、S3Aは設計者個人としての能力と組織力の融合を目指しています。アイデアの発想や設計思想を貫くといった行為には、設計者個人としての能力や意思によるところが大きいと言えます。しかし、設計は社会的責任のある行為であり、時間等様々な制約のある中で、十分に確認された信頼性の高い成果を纏め上げていくためには、個人に出来ることには自ずと限界が出てきます。個人の個性や能力に頼ったいわゆる「アトリエ」的な事務所ではなく、また単に効率を追求した縦割りの組織でもない。若く意欲に溢れた設計者が集まって一つの場を共有し、お互いに切磋琢磨・情報共有して設計者個人としての能力を高めあい、社会に対しては組織内で十分に吟味された信頼性の高い成果を提供していく、フラットな設計者集団(Associates)でありたいと考えています。理想論だと思われるかも知れませんが、兎に角そういった目標を共有する人々が集まって事務所をスタートしています。
◆S3Aとしてのスタート
2008年現在、建築、特に構造設計にとっては未だ逆風の時代です。2005年の耐震偽装問題、2007年の建築基準法改正と言った出来事を通して、構造設計を取り巻く環境は大きく変わり、設計者に求められる社会的責任のレベルも上がりました。その逆風の真っ只中でS3Aはスタートしましたが、構造設計・構造デザインと言う行為の本質は何ら変化したわけではありません。その風をしっかりと受け止めつつ、押し戻されることなく小さなチャレンジをコツコツと積み重ねて行きたいと考えています。
2008年1月
- 2009-05-28